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(1) 総合課税(10種類の所得)
所得税は、個人の一年間の「もうけ(=所得、利益)」に対して課税がされます。
所得は、原則としては、所得の種類を給与所得や譲渡所得などの10の区分に分け、それぞれの区分ごとに計算方法を規定し、区分ごとに計算された所得を合算され、課税されます。これを総合課税と言います。
10種類 | 所得の種類 | 所得(≒利益)の計算方法 | 総合課税 |
---|---|---|---|
1 | 利子所得 | 収入金額(何も引かない) | × |
2 | 配当所得 | 収入金額 − 負債の利子 | △ |
3 | 不動産所得 | 総収入金額 − 必要経費 | ○ |
4 | 事業所得 | 総収入金額 − 必要経費 | ○ |
5 | 給与所得 | 収入金額 − 給与所得控除額 | ○ |
6 | 退職所得 | ( 収入金額 − 退職所得控除額 ) ×1/2 | × |
7 | 山林所得 | 総収入金額 − 必要経費 | × |
8 | 譲渡所得 | 収入金額 − 取得費等 | △ |
9 | 一時所得 | 収入金額 − 要した費用 | ○ |
10 | 雑所得 | 収入金額 − 必要経費 | △ |
上の表の一番右の欄で、
・○となっているものは総合課税である
・×となっているものは総合課税ではない(分離課税と言います。分離課税については、2.で説明します)
・△となっているものは、内容により総合課税であるものも、ないもの(分離課税であるもの)もある
ということです。
○とされているもの、つまり総合課税とされているものは全部を合算して所得税が計算されるのです。
不動産所得、事業所得、給与所得などは馴染みが深いかと思われます。
総合課税でない所得税の計算方法を、分離課税と言います。
(2) 所得控除
ただし、所得税は個人に対する税金ですから、単純に「所得の全部」に対しては課税されません。「所得」からは、個人の様々な事情により税金を負担する能力が下がることを考慮して、「所得控除」という控除額が差し引かれます。
つまり合算された所得からは、医療費控除などの所得控除が差し引かれます。所得控除は14種類あります。
14種類 | 所得控除の種類 | 内容 |
---|---|---|
1 | 雑損控除 | 災害等にあった場合に控除 |
2 | 医療費控除 | 医療費を支払った場合に控除 |
3 | 社会保険料控除 | 国民年金等、厚生年金等を支払った場合に控除 |
4 | 小規模企業共済等掛金控除 | 小規模企業共済等を支払った場合に控除 |
5 | 生命保険料控除 | 生命保険を支払った場合に控除 |
6 | 地震保険料控除 | 地震保険を支払った場合に控除 |
7 | 寄附金控除 | 特定の寄附をした場合に控除 |
8 | 障害者控除 | 障害がある場合に控除 |
9 | 寡婦(寡夫)控除 | 寡婦(寡夫)である場合に控除 |
10 | 勤労学生控除 | 勤労学生である場合に控除 |
11 | 配偶者控除 | 配偶者がある場合に控除 |
12 | 配偶者特別控除 | 配偶者に一定の所得がある場合に控除 |
13 | 扶養控除 | 扶養がある場合に控除 |
14 | 基礎控除 | 誰でも38万円を控除 |
それぞれの所得控除には適用を受けるための要件があり、控除される金額については、それぞれの控除ごとに計算式が決められています。
医療費控除や生命保険料控除、扶養控除などは馴染みが深いかと思われます。
(3) 税率
合算された所得から所得控除が差し引かれたあと、税率をかけて所得税の税額が計算されます。
税率は、所得の大きさに応じて5%、10%、20%、23%、33%、40%となっています。この所得の大きさに応じて税率が上がる仕組みを、超過累進税率と言います。
課税される所得金額 | 総合課税の税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円超 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円超 990万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円超 1800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1800万円超 | 40% | 2,796,000円 |
控除額というのは、税率をかけた後の金額から一律差し引かれる金額で、速算のための金額です。
例えば、所得金額が300万円の人は、税額が
195万円×5% + (300万円 − 195万円)×10% = 202,500円
となりますが、これは
300万円×10% − 97,500円 = 202,500円
と同じ金額で、この方が計算が早く済みます。
(3) 税額控除
税率をかけて税額が計算されたら、そこから住宅取得控除などの税額控除額が差し引かれます。税額控除は、主に政策的な理由から設けられることが多いのですが、項目が多いためここでの説明は省略いたします。
(4) まとめ
総合課税とされる所得の税額
=( 今年一年のもうけの合計 − 所得控除額 ) × 税率 − 税額控除額
=( 10種類の所得の合計(○とされるもののみ) − 所得控除額 ) × 税率 − 税額控除額
実際に収める税額は、税額から予定納税額や、源泉所得税等の税金の前払分を差し引いて計算されます。
(1) 分離課税
土地や建物等を売却して利益が出た場合には、総合課税はされません。
自宅に限らず、土地や建物等を売却した場合には、譲渡所得の区分になります。しかし他の所得と合算されません(総合課税されません)。
土地や建物等を売却した場合には、他の所得と合算されず区分して(他の所得と分離して)課税がされます。これを分離課税と言います。
(2) 税率
土地や建物等を売却して利益が出た場合の税率は、その土地や建物等を持っていた期間により変わり、原則として、持っていた期間が5年以下なら30%、5年以上なら15%となります。
持っていた期間が5年以下か5年超かは、その土地や建物等を売却した年の1月1日において判定します。
また、給与所得や事業所得等の他の所得とは区分して計算しますから、他の所得がいくら多くても税率は増えることはなく、税率は一律です。これを比例税率と言います。
所有していた期間 | 土地建物等を売却した場合の税率 |
---|---|
売却年の1月1日において5年以下 | 30% |
売却年の1月1日において5年超 | 15% |
(3) まとめ
土地や建物等を売却して利益が出た場合の税額
= 売却によるもうけ × 税率
=( 売却による収入 − その資産を取得するために支払った金額等 ) × 税率
(1) 特別控除
自宅を売却して利益が出た場合には、「売却によるもうけ」にそのまま税金がかかるのではありません。
「もうけ」からは、3000万円の特別控除額が控除されます。つまり、売却により利益が出ても、その利益の金額が3000万円までなら所得税がかかりません。
自宅を売却して利益が出た場合の税額
=( 売却によるもうけ − 3000万円 ) × 15% または 30%
=( 売却による収入 − その資産を取得するために支払った金額等 − 3000万円 ) × 15%
または 30%
(2) 特別控除が適用されるための条件
特別控除は、自宅、つまり「居住用財産」を売却した場合に適用があります。
「居住用財産」とは、下記のものを言います。
@居住用に使っている家屋
A居住用に使わなくなった家屋で、使わなくなった日から3年後の年の12月31日までに売却するもの
B@またはAの家屋のの敷地
C災害によりなくなってしまった@の家屋の敷地で、居住用として使わなくなった日から3年後の年の12月31日 までに売却するもの
(3) 適用されない場合
配偶者などの特別な関係者への売却である場合、他の課税の繰延の適用を受けた場合、前年、前前年にこの特例や居住用財産の課税の繰延の適用を受けている場合等には、この特例の適用を受けることはできません。
(1)軽減税率
10年超保有していた自宅を売却して利益が出た場合には、3000万円の特別控除の他、軽減税率の適用を受けられることがあります。
保有期間が5年超の土地や建物等を売却した場合の税率は、原則として15%ですが、軽減税率が適用されると10%となります。
10年以上保有していた自宅を売却して利益が出た場合の税額
= 売却によるもうけ× 10%
=( 売却による収入 − その資産を取得するために支払った金額等 ) × 10%
(2)3000万円の特別控除との併用
さらに、軽減税率の特例は、3000万円の特別控除との併用が可能です。両方を同時に適用すると、計算方法は次のようになります。
10年以上保有していた自宅を売却して利益が出た場合の税額
=( 売却によるもうけ − 3000万円 ) × 10%
=( 売却による収入 − その資産を取得するために支払った金額等 − 3000万円 ) × 10%
(3)軽減税率が適用されるための条件
軽減税率は、「10年超保有」していた「居住用財産」を売却した場合に適用があります。
「10年超保有」していたかどうかは、自宅を売却した年の1月1日において判定します。
「居住用住宅」かどうかは、3.の特別控除と同じ要件です。
(4) 適用されない場合
配偶者などの特別な関係者への売却である場合、他の課税の繰延の適用を受けた場合、前年、前前年にこの特例や居住用財産の課税の繰延の適用を受けている場合その他一定の場合等には、この特例の適用を受けることはできません。
(1)課税の繰延
10年超保有し、かつ、10年以上居住した自宅を売却して利益が出た場合で、代わりの居住用財産を購入しているときには、3000万円の特別控除、軽減税率とは別に、課税の繰延の適用を受けられることがあります。
課税の繰延の適用を受けた場合には、その譲渡によるもうけに対する課税は将来に繰り延べられ、適用を受ける分についてはその年では課税がされません。適用を受けることができるのは、売却による収入金額のうち、代わりに購入した居住用家屋の取得に要した金額までです。つまり、売却による収入金額が、代わりの居住用財産の購入額を超える場合には、その超える部分については課税の繰延の適用を受けることができず、課税されます。また、課税が免除されるわけではなくあくまで繰延ですので、今回取得した代わりの居住用財産を売却する際に課税がされます。
・自宅の売却金額 ≦ 代わりの資産の購入金額 → 全額課税の繰延
・自宅の売却金額 > 代わりの資産の購入金額
→ {( 自宅の売却金額 − 代わりの資産の購入金額 )
− 自宅を取得するために支払った金額等
× ( 自宅の売却金額 − 代わりの資産の購入金額 ) / 自宅の売却金額 } × 15%
例)1000万円で購入した自宅を、5000万円で売却して3000万円で新たに購入した自宅に引っ越した
5000万円 > 3000万円
→ {(5000万円−3000万円)−1000万円×(5000万円−3000万円)/5000万円}×15%=240万円
(2)他の特例との併用
課税の繰延は、3000万円の特別控除と軽減税率との併用はできません。ですので、次の(1)と(2)のどちらかの有利な方を選択することになります。
(1)3000万円の特別控除 + 軽減税率
(2)課税の繰延
(3)軽減税率が適用されるための条件
軽減税率は、「10年超保有」し、かつ「10年以上居住」していた「居住用財産」を売却した場合に適用があります。
「10年超保有」していたかどうかは、自宅を売却した年の1月1日において判定します。
「10年以上居住」していたかどうかは、譲渡した日において判定します。
「居住用住宅」かどうかは、3.の特別控除と同じ要件です。
(4) 適用されない場合
配偶者などの特別な関係者への売却である場合、他の課税の繰延の適用を受けた場合、前年、前前年にこの特例や居住用財産の課税の繰延の適用を受けている場合その他一定の場合等には、この特例の適用を受けることはできません。
(1)特別控除
資産を収用等されて利益が出た場合には、「売却によるもうけ」にそのまま税金がかかるのではありません。
「もうけ」からは、5000万円の特別控除額が控除されます。つまり、売却により利益が出ても、その利益の金額が5000万円までなら所得税がかかりません。
資産を収用等されて利益が出た場合の税額
=( 収用等によるもうけ − 5000万円 ) × 15% または 30%
=( 収用等による収入 − その資産を取得するために支払った金額等 − 3000万円 ) × 15%
または 30%
(2) 特別控除が適用されるための条件
特別控除は、資産を収用等された場合に適用があります。
(3) 適用されない場合
最初に買い取り等の話があった日から6カ月以内に譲渡しなかった場合、2年以上にわたり複数の資産を収用された場合の2年目以後の収用等、最初に収用の話を受けた人からの転売による収用の場合等には、この特例の適用を受けることはできません。
(4)課税の繰延
資産を収用等され、対価補償金等で代わりの資産を購入した場合には、課税の繰延の適用もあります。特別控除と課税の繰延は選択適用となり、どちらかひとつだけ適用を受けることができます。
(1) 相続税の取得費加算
相続等により取得した資産を、相続税の申告期限から3年以内(相続から3年10ヵ月以内)に売却してもうけが出た場合には、相続税の申告により納付した相続税の一部を、「その資産を取得するために支払った金額」に足すことにより、もうけから差し引くことができます。
相続した土地等を売却して利益が出た場合の税額
=( 売却によるもうけ − 相続税の一部 ) × 15% または 30%
={ 売却による収入 − (その資産を取得するために支払った金額等+相続税の一部)} × 15%
または 30%
※相続税の一部 = 相続税 × 相続した土地等の相続税評価額 / 相続税の課税価格
(2) 適用されない場合
相続が限定承認の場合等には適用を受けることはできません。
(1)課税の繰延
土地や建物等の一定の固定資産を交換した場合には、課税の繰延の適用があります。
課税の繰延の適用を受けた場合には、その譲渡によるもうけに対する課税は将来に繰り延べられ、適用を受ける分についてはその年では課税がされません。適用を受けることができるのは、交換差金等を受け取らない場合です。つまり、交換差金等を受け取る場合には、受け取る交換差金等については課税の繰延の適用を受けることができず、課税されます。また、課税が免除されるわけではなくあくまで繰延ですので、今回取得した代わりの土地や建物等を売却する際に課税がされます。
・交換差金等を受け取らない場合
→ 全額課税の繰延
・交換差金等を受け取る場合
→ { 受け取った交換差金等
− 交換により相手に渡した土地や建物等を取得するために支払った金額等
× 受け取った交換差金等
÷ ( 交換により取得した土地や建物等の時価 + 受け取った交換差金等の金額 )} × 15%
例)10年前に2000万円で購入した時価4000万円の土地を相手に渡して、時価3500万円の土地を相手から取得し 交換差金500万円を受け取った場合
→ {500万円−2000万円×500万円/(3500万円+500万円)}×15%=37万5000円
(2)課税の繰延が適用されるための条件
課税の繰延は、次の全ての条件を満たす場合に適用されます。
(1)以下の同一区分の固定資産の交換であること
@土地
A建物
B機械及び装置
C船舶
D鉱業権
(2)自分も1年以上所有していた固定資産であり、相手も1年以上所有していた固定資産の交換であること
(3)交換により相手に渡した固定資産と、交換により相手から取得した固定資産とが同じ用途であること
(4)交換により相手に渡した固定資産の時価と、交換により相手から取得した固定資産の時価との差額が、
どちらか高い時価の20%以内であること
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